31.雪のみちゆき 梅川・忠兵衛
鏡五郎&真木柚布子
作詞:下地亜記子
作曲:久保進一
たとえ死のうと 嘲笑(わらわ)れようと
引くに引けない 恋の意地
つらい浮世の 哀しい運命(さだめ)
あなたいりゃこそ 耐えられた
梅川… 忠さま…
揺れる紅(あか)い灯(ひ) しのび泣く
「察(さっ)しはついていようが あの金は届
けねばならぬ預かり金その封印(ふういん)を切っ
たからには命がないのは知れた事…あ
のように衆人(みな)の前で恥かかされては男
の一分(いちぶ)がたたず…梅川 わいと一緒に
死んでくれるか…」
「かんにんして下さんせ いとしい忠
さまを罪人(とがにん)にしたのも みんなこの私
ゆえ… 命など なんで惜しい事があり
ましょう 金(かね)が仇(かたき)の世の中で 主(ぬし)さんだ
けが わてのもの 一緒に死ねるなら
本望(ほんもう) 嬉しいわいなぁ…」
花は散っても 根元に還(かえ)る
人は還れぬ 死出の旅
恨みますまい この世のことは
みんな儚い 夢の夢
梅川… 忠さま…
急ぐ大和路(やまとじ) 凍る空
「死ぬる身に心残りはないけれど 忠
さまの親父様(おやじさま)に一目逢(お)うて お詫び
がしたかった…さだめしこの梅川を恨
みに思うていられるにちがいない…」
「そなたの母御(ははご)とて同じこと 先立つ不
孝はあの世とやらで詫びもしょう… さ
ぁさ急げ 追っ手に見つかり引き離されて
は一大事 離れまいぞえ なぁ梅川」
吹雪く荒野(あれの)で よろけて倒れ
息を殺して 肌寄せる
どうぞ許して 私の咎(とが)を
これが今生(こんじょう)の お別れか
梅川… 忠さま…
雪のみちゆき 鳥が啼く
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